【密着|小倉富男さん】耕作放棄地の再生で地域を守る
- 2015/12/4
- 話題の人
富岡で多面的機能支払交付金を活用し、耕作放棄地の再生・活用に取り組む小倉富男さん。その活動に密着しました。
耕作放棄地とは「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」のこと。近年国の食料自給率の低下が問題とされていますが、農地面積の減少は大きな要因です。農地の減少理由として、耕作放棄によるものの割合は約半数。日本の自給率を高めるためにも、耕作放棄地の解消および発生防止は重要な課題なのです。
高齢化による農業後継者不足が多くの要因ですが、木更津市も例外ではありません。農地は一度耕作をやめて数年経てば、原形を失うほどに荒れてしまいます。病害虫・鳥獣被害の発生など、周りの環境にも様々な悪影響を与えるおそれがあります。
小倉さんは、年間を通じて地域の住民はじめ小学校や千葉大学と連携し、様々な活動をしています。そのひとつが、小学生による稲作の授業です。富岡小学校では、6年前から生徒による米作りを実践。田植えから稲刈り、脱穀まで、すべて手作業で行っています。子ども達が地域の農業や農地について知り考える機会を大切にしたいと考えています。
まだ暑さが残る9月初旬、小学校からほど近い田んぼでは、生徒達による稲刈りが行われていました。ひとり1本の鎌を持ち、汗だくで稲穂を刈り取っていきます。刈り取った稲は、昔ながらの天日干しで乾燥。また、掛け干しの際、稲穂の束を縛る縄も藁(わら)から作ります。はじめはうまく出来ない子ども達も、地域の方々から指導を受けみるみる上達。一本完成するたび、達成の喜びを感じているようでした。
稲刈りの1週間後、田んぼに登場したのは古めかしい足踏み式の脱穀機。はじめて見る機械に、子ども達は興味深々です。足でペダルを漕ぎながら、稲(いね)藁(わら)の束を持った手を左右に振りながら脱穀をしていきます。簡単なようで難しい作業に悪戦苦闘すること数十分、機械を開けてみました。思っていたよりお米の量が少ないことに驚く子ども達。現代では、稲刈りから脱穀の工程を、短時間で終えてしまえる工程です。普段何気なく食べているお米について、それぞれが考えるきっかけとなったようです。
木々が色づきはじめた10月、小学校の体育館では地域の方々を招いて、収穫祭が行われました。稲作の授業を通して学んだことを、各学年ごとに発表します。それぞれが学んだこと、考えたことを自分たちで話し合いまとめました。子ども達の大きく成長した姿を、指導をしてきた小倉さんや農家の皆さんも笑顔で見守ります。その後は、育てたお米を使ったおにぎりや、畑で収穫した枝豆や芋などを、全員で試食しました。
この日は、共に活動をしてきた千葉大学の学生達も参加。耕作放棄地に適した作物の育成や活用について研究しています。小倉さん監修のもと育ててきた枝豆もお披露目されました。また、この大豆は地域の生産者との協力で味噌にもなりました。国産の無農薬栽培、無添加の手作り味噌。地域の新しい特産品として、私達のもとへやってくる日も遠くないかもしれません。
公務員を退職後、現在の活動をはじめた小倉さん。当初は、地域の農家さんの理解を得るため、行き詰まることもあったといいます。今では、農業を志す若者達が小倉さんを慕い集まってくるようになりました。この日は、耕作放棄地を借りてお米を耕作している鈴木康元(やすはる)さんが話にやってきました。時には厳しく、時には優しく、叱咤激励する姿は、まるで地域のお父さんのよう。
富岡地区では年間を通して、収穫したお米を使ったライスバーガー作りなど、市民が参加できる、様々な活動を実施しています。今後 KISACON でも告知していきますので、ぜひ気軽に足を運んでみてください。